院長コラム

2004/09/01 反復刺激試験により診断した後天性重症筋無力症の犬の1例
No. 4

                        樋渡 敬介(御殿場インター動物病院)
                        岡本 哲也(渡辺動物病院)
                        渡辺 直之(渡辺動物病院)

1. はじめに  後天性の重症筋無力症(MG)は、神経-筋接合部におけるアセチルコリン受容体(AchR)に対する自己抗体が関与した自己免疫疾患とされている。
 MGは病歴、臨床所見、血液検査、胸部X線検査、テンシロン試験、および抗AchR抗体の検出などにより総合的に診断される。
 上記の検査において確定には至らず、誘発刺激試験によりMGと診断した犬の1例について報告する。 2. 症例  2歳齢、去勢済み、ウェルシュコーギー、13kg。
 流涎、食後の嘔吐および運動不耐性を主訴に来院。胸部X線検査において食道拡張を認めた。
 CBC、血液生化学検査、甲状腺ホルモン検査(T4)は正常で、抗AchR抗体は陰性であった。
 食道拡張の原因を鑑別する目的で反復刺激試験を実施した。 3. 方法  イソフルレン吸入による全身麻酔下にて、反復刺激による誘発筋電図検査を実施した。
 刺激用針電極は大転子付近より坐骨神経へ刺入、筋電図記録用針電極は前脛骨筋へ刺入した。
 刺激電位は、神経刺激により最大収縮が得られる最小電位に設定、3Hzで5−6回の連続刺激を実施した。
 反復刺激により誘発された筋電図の振幅をそれぞれ測定した。 4. 結果と診断  3Hzの反復刺激において、5発目に最大(27%)となる振幅の低下が認められ、神経筋接合部疾患と診断した。筋電図検査および各種検査結果より、MGと診断した。 5. 考察  犬のMGの約80-90%において抗AchR抗体が検出されると報告されているが、本症例では検出されなかったため、反復刺激試験を実施した。
 結果は27%の減衰率で、犬のMGの診断基準である減衰率10%以上を超えており、他の検査結果も含めてMGと診断した。
犬のMGにおいて抗AchR抗体が検出されなかった場合には反復刺激試験が有効な検査の1つであることが示された。


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